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令和6年(2024年)度事業計画
自 令和6年(2024年)4月 1日
至 令和7年(2025年)3月31日

Ⅰ 沖縄県を取り巻く社会・経済環境

2023年度の国内経済は、約3年半にわたるコロナ禍を経て、経済活動の再開を背景に持ち直しの動きがみられた。2023年5月に、新型コロナウイルス感染症の法的な位置づけが5類に移行されたことで、社会経済活動はおおむね正常化し、個人消費は回復の動きが強まった。その結果、企業収益は増収となり、設備投資の動きも活発化して、国内経済は緩やかな回復基調に移行した一年となった。また2月には日経平均株価の34年振りの最高値更新や、日銀のマイナス金利政策の解除など、日本経済に大きな変化がみられた一年となった。

2023年度の県内経済については、年間を通じて物価高騰や人手不足がみられたが、新型コロナウイルス感染症の影響が大幅にやわらいだことによる外出機会の増加を背景に消費マインドが高まり、個人消費は回復の動きが強まった。基幹産業である観光業は、国内の旅行需要が旺盛となり、国内観光客数は2019年を上回る水準まで回復し、国内景気同様、緩やかに拡大する動きがみられた。

2024年度の国内経済は、不安定な世界情勢(ロシアのウクライナ侵攻の継続、台湾を取り巻く国際情勢等)や物価高騰など懸念材料はあるものの、底堅い個人消費や、旺盛な設備投資意欲に支えられ回復するとみられる。

また県内経済は、基幹産業の観光業において、コロナ禍からいち早く回復した国内客の増加が見込まれるほか、直行便の就航を背景に外国人観光客の増加傾向が続いており、県民の消費需要に加えて県外観光客と外国人観光客の需要も加わり、緩やかに拡大するとみられる。また県内へのクルーズ船の寄港回数もコロナ禍前(2019年)の581回を上回る約590回が予定される等の好材料もある。さらに沖縄観光の回復に伴い民間投資の再開の動きが強まっている他、公共工事においても沖縄振興予算案が前年と同水準となること、防衛省関連予算案の歳出ベースが高い水準で維持されること等から経済は底堅く推移するとみられる。一方で、物価高騰や生産年齢人口の減少傾向の中での慢性的な人手不足や2次交通の問題など、景気下押しの影響も懸念される。それらを解決し県経済を発展させるためには、適切な価格転嫁と賃金上昇の好循環への取り組みや、DX活用による業務効率化等に取り組んでいく必要がある。

沖縄県では一昨年度、第6次振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」がスタートした。これまでの5次にわたる振興計画により社会資本の整備が進み、観光産業や情報通信関連産業の振興など着実な成果が現れている一方で、一人当たり所得水準が全国平均の約7割で全国最下位の状況が続いており、子供の貧困率の高さの解決に引き続き取り組んでいく必要がある。

Ⅱ 活動基本方針

2023年度は例会を計画通り開催した。各委員会では活動方針に則り、専門家や有識者による講演や意見交換、視察等を通じて、沖縄経済を取り巻く諸課題について考察を深めた。重点施策に掲げた、約3年半にわたるコロナ禍の影響でダメージを受けた沖縄経済の再生と持続的な社会の実現に向けて取り組んだ。また2022年度に全国でも初めて県に手交した「沖縄県における新型コロナウイルス禍の総括と提言」の内容である、今後発生しうる予期せぬリスクに備えレジリエンスを高める体制整備等に取り組んだ。さらに世界秩序の揺らぎと沖縄の地理的環境から、経済人として、安全保障上の有事が発生した際の事業継続と従業員避難等について調査研究に取り組み、「有事の際の事業継続と従業員避難に関する提言書」を沖縄県と国に手交した。加えて新沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の実現に向けて、県と協力した取り組みを進めた。また昨年度に引き続き電気料金高騰に対する負担軽減に向けた活動に取り組んだ。

2024年度は、コロナ禍を経て、一層の経済活動の活発化が見込まれる。また、沖縄振興特別措置法の見直し規定による「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の検証作業を行う2025年度の前年度であり、計画の実現に向けて着実に取り組むべき年度である。沖縄経済発展に向けた極めて重要な1年であり、改めて当会の存在意義を発揮しつつ、国・県と連携し、沖縄経済の発展と持続可能な社会の実現に向けて取り組む。具体的には、基幹産業である観光業の高付加価値化、DX推進やリスキリング等の人材育成による生産性向上、イノベーション・エコシステム構築への取り組みを、より積極的に行う。また、沖縄独自のノウハウや沖縄発のスタートアップならびに知的財産等を活用した稼ぐ力の強化に向けて調査研究に取り組む。さらに、県に手交した「有事の際の事業継続と従業員避難に関する提言書」の内容である、事業継続計画や避難計画の策定、有事に備える体制整備等に取り組む。

1.スローガン

「沖縄の未来を見据えてダッシュ!」

2.取り組み事項(重点施策)

  • 県に手交した「有事の際の事業継続と従業員避難に関する提言書」の内容の実現に取り組む。
  • 沖縄独自の高度な技術や沖縄発のスタートアップならびに知的財産等を活用した稼ぐ力の強化に向けて調査研究に取り組む。
  • 新沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の内容を実現するための調査研究や産学官等の連携強化に向け行動する。

Ⅲ 活動方針

1.活動計画

(1)例会活動
原則として、毎月第2月曜日(1・4・8月を除く)に例会を開催する。
例会は政治・経済や経営・ビジネス分野を中心に、その時々の時代を見据えた沖縄の経済振興のあり方や企業経営の指針となるようなテーマで講演を企画する。

(2)研究委員会活動

以下の8つの委員会を設置する。
各委員会は、原則として副代表幹事を責任者とし、その下に委員長を置き、年度計画で定めた活動方針・テーマに基づき研究活動を行い、積極的に提言していく。

➀ 国際委員会
昨今の世界潮流を踏まえつつ、新沖縄振興計画の実現に向け、強固な自立型県経済の構築を図る調査研究や、本県が我が国とアジアを繋ぐビジネスフロンティアの役割を担うべく、海外ビジネスの可能性や先端技術活用の先進事例について調査研究を行う。また、成長著しいアジアのダイナミズムを取り込むべく、引き続き国際物流拠点の形成や臨空・臨港型産業の集積に焦点を当てるとともに、MRO事業を中心とした航空関連産業の発展に関する調査研究および世界最高水準の空港を目指す調査研究を行う。

② 地域・経済活性化委員会
アフターコロナの回復基調にある沖縄経済が持続的に発展、活性化する方策等について調査研究を行う。具体的には沖縄経済全体を俯瞰したマクロ的な取り組み、およびDXの活用や外部企業との連携等のミクロ的な取り組みについて考察を行う。また、未来社会「Society 5.0」の実現に向けた取り組みについて理解を深める。その他として、地域再生の事例として、東日本大震災後における東北地方の企業の取り組みについて調査研究を行う。

③ 観光委員会

コロナ禍を乗り越え、V字回復を見せる観光業界の更なる発展と再び危機に倒れない強靭な沖縄観光産業の確立を目指し、高付加価値化や好循環な観光地づくりに向けた調査研究を行う。さらに、世界から選ばれる持続可能な観光地の形成に向け、SDGsに適応した観光地マネジメントについても調査研究を行う。
また、沖縄振興計画、観光振興計画、沖縄ブランド強化の実現に向けた取り組みを行い、他産業との連携ならびにシナジーの最大化を模索する。

④ 情報通信委員会
県内企業の「稼ぐ力」の強化を目指し、企業や産業におけるDXを加速させてビジネス変革を生み出すAIやIoT、ロボット、通信、ビッグデータ等のデジタル技術活用に関する調査研究を行う。また、強靭かつレジリエントな県経済を構築するためには、国家戦略特区やデジタル技術を活用した新たな産業育成ならびに既存産業のDXが重要であり、その実現に向けて産官学の協業を意識した調査研究を行う。

⑤ 環境・エネルギー委員会
昨今の国際紛争を契機とした世界のエネルギー危機を踏まえ、エネルギー安定供給の重要性を再認識するとともに、GXを通して2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの主力化や水素・アンモニアなどの次世代エネルギー、SAFやRDを中心としたリニューアブル燃料等に関する調査研究を行う。また、沖縄において脱炭素社会のカギを握る電気自動車等の動向・将来性についても調査研究を行う。さらに、新たな産業振興のシーズとして、沖縄が持つ豊かな自然環境や生物資源の有効かつ持続的な利活用を目指し、その保全・適切な管理についての調査研究を行う。

⑥ 基地・安全保障委員会
厳しさを増す昨今の国際情勢に注視し、日本の安全保障の現状と課題について、県内外有識者、自衛隊関係者、米軍関係者による講演・意見交換・視察等を行う。また、日米地位協定の見直しや在沖米軍基地の過重負担の軽減等に係る諸問題について冷静に判断しつつ、アジア・太平洋地域における我が国の安全保障体制およびその中での沖縄県の位置づけに関する調査研究を行う。

⑦ 未来創造委員会
持続可能な経済社会の実現のために、多様な人財が活躍できる社会の実現や、新しい産業を創出する人財教育、リスキリング教育等の調査研究を行う。また、未来への投資の観点から、産学連携等によるイノベーションに関する調査研究を行うとともに、社会的包摂を基本とした考えのもと、沖縄の貧困問題等にも取り組んでいく。また、公益財団法人経済同友会の「未来選択会議」では各地の経済同友会との協業が検討されている。当委員会はその意義を共有し、連携して活動していく。

⑧ SDGs委員会
東京や九州の経済同友会の動きに呼応し、「社会課題解決に貢献するこれからの企業経営のあり方」に関する調査研究を推し進める。
この方向性のなかで、社会課題解決に資する企業/事業を生み出す環境整備や制度の活用を促進し、併せて県民総幸福度指標提言を踏まえ、新設される県こども未来部と連携し、県民意識調査や貧困問題に関する調査研究を行う。

(3)会員親睦活動
会員の親睦・交流を図るため、親睦会、ゴルフ大会、新春懇談会等を開催する。

(4)交流活動
九州経済同友会および他地域経済同友会との交流を図る。

(5)入会促進活動
会の活性化を図り活動をさらに発展させるため、なお一層会員の増強に努める。

(6)その他活動
①当会の活動に沿った県内の経済団体や行政機関等との連携・協力に努める。
②当会の諸活動や会員異動等の報告と例会における講演要旨の情報提供のため、季刊誌を発行する(年4回)。
③会員に対するサービスの一環として、当会以外の団体が開催する講演、シンポジウム等の会員への情報提供を行う。
④当会ホームページへの視察報告書等掲載を通して、会員への委員会活動内容・新着情報提供に努める。

2.会務執行組織

(1)代表幹事会
必要に応じ随時開催し、当会運営に関する重要事項について審議する。

(2)常任幹事会
例会開催に併せ、原則として毎月第2月曜日(1・4・8月を除く)に開催し、当会運営に関する事項について審議・報告を行う。

(3)幹事会
幹事会の申し合わせ、又は代表幹事の必要に応じ随時開催し、当会運営に関する重要事項について審議する。

(4)総務企画委員会
各委員会の委員長で構成し、当会運営に関する重要事項について協議し、必要に応じ代表幹事会、常任幹事会に意見具申する。

(5)組織拡大・交流委員会
会員拡大と組織の活動強化、さらには会員間・他経済同友会等との親睦交流を図る。