自 令和5年(2023年)4月 1日
至 令和6年(2024年)3月31日
Ⅰ 沖縄県を取り巻く社会・経済環境
新型コロナウイルス感染症は、昨年度も国内の経済活動に影響を与えたが、県内経済は、まん延防止等重点措置等の外出制限がない状況が続き、経済活動が活発化する中、観光客や県民の人流回復が鮮明になり、観光関連業、小売業の回復が見られた。特に昨年夏以降は、人流抑制の緩和の方向性および全国旅行支援等の国の政策により国内観光客数がコロナ禍前水準を上回り、観光関連業、飲食業などのサービス業の回復への動きが見られた。また足元では、台湾等の海外航空路線や国際クルーズ船が再開されたことにより、海外観光客数の回復が期待される。県内景気は回復基調に移行し、今後の本格的な経済回復が期待される状況にある。
一方で、ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する国際的な経済制裁を起因とする資源価格、商品価格の高騰は世界経済全体に影響を及ぼしており、加えて急激な円安を起因とする国内物価上昇で、事業者は仕入れ価格上昇と価格転嫁の遅れにより収益状況が圧迫される等、沖縄県経済に多大な影響を及ぼしており、予断を許さない状況である。
また新型コロナウイルス感染症流行前から問題であった人手不足は、今後沖縄県経済が回復に進む中でより深刻になる可能性があり、DX推進やリスキリング等の人材育成等による生産性向上への取り組みが必要となっている。さらに尖閣諸島周辺海域での中国海警局船舶の領海侵入が継続している状況の中、昨年8月には中国が台湾周辺で軍事演習を実施し、日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルが落下する事態が発生している。このように従来の世界秩序は揺らいでおり、経済人として安全保障と向き合い、問題解決に取り組むべき状況にある。
沖縄県では昨年、第6次振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」がスタートした。これまでの5次にわたる振興計画により社会資本の整備が進み、観光産業や情報通信関連産業の振興など着実な成果が現れている一方で、一人当たり所得水準が全国平均の約7割で全国最下位の状況が続いており、子供の貧困率の高さの解決に引き続き取り組んでいく必要がある。
基幹産業の観光業に関しては、コロナ禍の2021年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録され、観光資源としての価値が一層高まった。また今年8月には「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」が開催される等、産業振興に資するイベントも開催される。経済活動が活発化する中、今年度はコロナ禍でダメージを受けた沖縄経済の再生に向けて積極的に活動すべき年である。
Ⅱ 活動基本方針
基幹産業の観光業に関しては、コロナ禍の2021年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録され、観光資源としての価値が一層高まった。また今年8月には「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」が開催される等、産業振興に資するイベントも開催される。経済活動が活発化する中、今年度はコロナ禍でダメージを受けた沖縄経済の再生に向けて積極的に活動すべき年である。
令和5年度は、3年にわたるコロナ禍の影響でダメージを受けた沖縄経済の再生と持続的な社会の実現に向けて取り組む。具体的には、基幹産業である観光業の高付加価値化、DX推進やリスキリング等の人材育成による生産性向上、イノベーション・エコシステム構築への取り組みをより積極的に行う。また県に手交した「沖縄県における新型コロナウイルス禍の総括と提言」の内容である、今後発生しうる予期せぬリスクに備えレジリエンスを高める体制整備等に取り組む。さらに世界秩序の揺らぎと沖縄の地理的環境から、経済人として、安全保障上の有事が発生した際の事業継続と従業員避難等について調査研究に取り組む。加えて新沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の実現に向けて、県と協力した取り組みを進めるとともに、昨年度に引き続き電気料金高騰に対する負担軽減に向けた活動に取り組む。
今年度はコロナ禍からの沖縄経済再生に向けた極めて重要な1年であり、改めて当会の存在意義を発揮する年度とする。
1.スローガン
「沖縄経済再生へ攻める!」
2.取り組み事項(重点施策)
- 3年にわたるコロナ禍の影響でダメージを受けた沖縄経済を再生させる取り組みをより積極的に行い、県に手交した「沖縄県における新型コロナウイルス禍の総括と提言」の内容の実現に取り組む。
- 国際情勢と沖縄の地理的環境を鑑み、経済人として安全保障上の有事が発生した際の事業継続と従業員避難等について調査研究に取り組む。
- 新沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の内容を実現するための調査研究や産学官等の連携強化に向け行動する。
(1) アフターコロナ時代の世界潮流を踏まえつつ、新沖縄振興計画の実現に向け、強固な自立型県経済の構築を図る調査研究や、本県が我が国とアジアを繋ぐビジネスフロンティアの役割を担うべく、海外ビジネスの可能性や先端技術活用の先進例について調査研究を行う。
(2)新沖縄振興計画において、沖縄は「希望と活力にあふれる豊かな島」を目指すとし、その方策である未来社会「Society5.0」の実現やイノベーション・エコシステムの形成に向けて、国家戦略構想等を活用した積極的な実証実験や調査研究を行う。
(3) 今後の沖縄の観光復興は、引き続き、危機に倒れない強靭な産業構造の確立と、ビフォーコロナ以上の高付加価値化を推し進める必要がある。攻めの姿勢をもって観光の「質と量」ならびに「稼ぐ力」を両輪で高め、裾野の広い観光産業の活性化に資するための調査研究を、より積極的に行っていく。
(4) 新沖縄振興計画の実現に向けて、デジタル社会を支える情報通信関連産業の高度化・高付加価値化に関する調査研究および視察活動と、国家戦略特区やデジタル技術を活用した新たな産業育成ならびに既存産業のDXの実現に向けて産官学の協業を意識した調査研究を行う。
(5) ウクライナ情勢を踏まえた日本および沖縄におけるエネルギーの安定供給について理解を深めるとともに、持続可能な社会の構築を目指し、2050年カーボンニュートラルや再生可能エネルギー導入拡大、次世代エネルギー技術等に関する調査研究を行う。
(6) 昨今の国際情勢に注視し、日本の安全保障の現状と課題について、県内外有識者、自衛隊関係者、米軍関係者による講演・意見交換・視察等を行い、日米地位協定の見直しや在沖米軍基地の過重負担の軽減等に係る諸問題について、アジア・太平洋地域における我が国の安全保障体制、沖縄県の位置づけに関する調査研究を行う。
(7) 「ひとづくり委員会」の人財育成を継承しつつ、幅広い分野の横断的な調査研究により新たな未来を創造していく。具体的には、持続可能な社会の担い手育成を目的に、多様な人財が活躍できる社会の実現や新産業を創出する人財教育、リスキリング教育等の調査研究を行う。またOISTとの連携等によるイノベーションや子どもの貧困問題等の調査研究を行う。加えて今後の不確実性の高い社会への対応力向上を目的に、多様なステークホルダーとの連携体制構築が一層求められている中、(公社)経済同友会は「未来選択会議」を開催し、世代・肩書等の違いを越えてあらゆる課題に対して自由闊達な議論の場を創っていくことを実践している。その中で各地経済同友会との協業が検討されており、連携して活動する。
(8) 県のSDGs行政との連携を土台に、新しい認証制度や県の分科会の活用により企業SDGsを推進し、また、沖縄県民総幸福度指標の運用段階に関与し、沖縄ならではのSDGs事業を調査研究し後押しする。
Ⅲ 活動方針
1.活動計画
(1)例会活動
原則として、毎月第2月曜日(1・4・8月を除く)に例会を開催する。
例会は政治・経済や経営・ビジネス分野を中心に、その時々の時代を見据えた沖縄の経済振興のあり方や企業経営の指針となるようなテーマで講演を企画する。
(2)研究委員会活動
以下の8つの委員会を設置する。
各委員会は、原則として副代表幹事を責任者とし、その下に委員長を置き、年度計画で定めた活動方針・テーマに基づき研究活動を行い、積極的に提言していく。
➀ 国際委員会
アフターコロナ時代の世界潮流を踏まえつつ、新沖縄振興計画の実現に向け、強固な自立型県経済の構築を図る調査研究や、本県が我が国とアジアを繋ぐビジネスフロンティアの役割を担うべく、海外ビジネスの可能性や先端技術活用の先進例について調査研究を行う。また、地理的優位性を活かした国際物流拠点の形成や臨空・臨港型産業の集積に関する調査研究、MRO事業を中心とした航空関連産業の発展に関する調査研究および世界最高水準の空港を目指す調査研究を行う。
② 地域・経済活性化委員会
新沖縄振興計画において、沖縄は「希望と活力にあふれる豊かな島」を目指すとし、その方策である未来社会「Society5.0」の実現やイノベーション・エコシステムの形成に向けて、国家戦略構想等を活用した積極的な実証実験や調査研究を行う。また、今後の予期しえない危機に対して強靭かつレジリエントな県経済を構築するための新たな産業育成については、持続性という観点から「適地適作」を念頭に置き、観光産業とシナジー効果のある分野に注視し、調査研究を行う。
③ 観光委員会
今後の沖縄の観光復興は、引き続き、危機に倒れない強靭な産業構造の確立と、ビフォーコロナ以上の高付加価値化を推し進める必要がある。
攻めの姿勢をもって観光の「質と量」ならびに「稼ぐ力」を両輪で高め、裾野の広い観光産業の活性化に資するための調査研究を、より積極的に行っていく。 また、沖縄振興計画、観光振興計画、沖縄ブランド強化の実現に向けた取り組みを行い、他産業との連携ならびにシナジーの最大化を模索する。
④ 情報通信委員会
新沖縄振興計画の実現に向けて、デジタル社会を支える情報通信関連産業の高度化・高付加価値化に関する調査研究および視察活動を行う。また、今後の予期しえない危機に対して強靭かつレジリエントな県経済を構築するためには、国家戦略特区やデジタル技術を活用した新たな産業育成ならびに既存産業のDXが重要であり、その実現に向けて産官学の協業を意識した調査研究を行う。
⑤ 環境・エネルギー委員会
ウクライナ情勢を踏まえた日本および沖縄におけるエネルギーの安定供給について理解を深めるとともに、持続可能な社会の構築を目指し、2050年カーボンニュートラルや再生可能エネルギー導入拡大、次世代エネルギー技術等に関する調査研究を行う。また、強靭かつレジリエントな県経済を構築するための新たな産業振興のシーズとして、沖縄が持つ豊かな自然環境や生物資源の有効かつ持続的な利活用を目指し、その保全・適切な管理についての調査研究を行う。
⑥ 基地・安全保障委員会
昨今の国際情勢に注視し、日本の安全保障の現状と課題について、県内外有識者、自衛隊関係者、米軍関係者による講演・意見交換・視察等を行う。また、日米地位協定の見直しや在沖米軍基地の過重負担の軽減等に係る諸問題について冷静に判断しつつ、アジア・太平洋地域における我が国の安全保障体制およびその中での沖縄県の位置づけに関する調査研究を行う。
⑦ 未来創造委員会
「ひとづくり委員会」での人財育成を通じた経済発展の道筋を継承しつつ、より幅広い分野の横断的な調査研究によって新たな未来を創造していく。具体的には、持続可能な社会の担い手の育成を目的に、多様な人財が活躍できる社会の実現や、新しい産業を創出する人財教育、リスキリング教育等の調査研究を行う。また、未来への投資の観点から、OISTとの連携等によるイノベーションに関する調査研究を行うとともに、社会的包摂を基本とした考えのもと、子どもの貧困問題等にも取り組んでいく。また、新型コロナウイルス感染症のまん延やロシアによるウクライナ侵攻等による国際情勢の緊張などから、経済安全保障の重要性がより高まっている。今後は、不確実性の高い社会への対応力を向上させるために、多様なステークホルダーとの連携体制を構築していくことが一層求められる。公益財団法人経済同友会では「未来選択会議」を開催し、世代・性別・所属・肩書などの違いを越えてあらゆる課題に対して自由闊達な議論の場を創っていくことを実践している。その中で各地の経済同友会との協業が検討されている。当委員会は、その意義を共有し、連携して活動していく。
⑧ SDGs委員会
県のSDGs行政との連携を土台に、新しい認証制度や県の分科会の活用により企業SDGsを推進し、また、沖縄県民総幸福度指標の運用段階に関与していく。加えて、県内で胎動する沖縄ならではのSDGs事業を調査研究し後押しする。こうして、沖縄が”SDGs事業がどんどん生み出される地”になるよう調査研究および視察活動を行う。