令和7年(2025年)度事業計画
自 令和7年(2025年)4月 1日
至 令和8年(2026年)3月31日
Ⅰ 沖縄県を取り巻く社会・経済環境
2025年度の国内経済は、雇用・所得環境が改善する中での個人消費の緩やかな回復傾向と、堅調な企業収益を背景とした企業の設備投資の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、不安定な国際情勢に加え、昨今のトランプショックと呼ばれる米国新政権の関税政策に端を発した金融市場の混乱など、世界経済の不透明性・不確実性が非常に高まっており、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響とともに、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。
県内経済は、入域観光客数が今後も順調に推移されると予想される中、7月には沖縄本島北部の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」の開業を控えており、基幹産業である観光業を中心に、更なる景気の拡大に期待が高まる。
一方、世界経済が悪化した場合、直接・間接的に観光分野をはじめ県経済に大きな影響も及ぼすことも懸念される。
また、県経済が持続的に発展するために課題となっている深刻な人手不足への対応や物価高対策、稼ぐ力(付加価値を生み出す力)の向上、量から質への転換、二次交通問題への対応、さらには子どもの貧困問題や高度専門人材の育成・教育など、課題も数多くある。
このような中、2024年8月に県内の経済界が中心となり、沖縄の将来像を具体化するGW2050 PROJECTSをスタートさせた。那覇空港機能拡張と那覇・浦添・宜野湾の3市の基地返還跡地を一体的に開発し、世界に開かれたゲートウェイとしての発展を目指す構想を掲げ、「那覇空港を起点とした交通網の整備」のみならず、「沖縄らしい産業の創出」や「持続的発展を担う人材育成」、「2050カーボンニュートラルに向けたクリーンエネルギー社会の実現」などを柱に、沖縄の国際競争力の強化を図り、日本を牽引する県経済の実現に取り組む計画でもある。
また、2025年は、県経済の「自立的発展」や「誰一人取り残さない社会」の実現を掲げ、2022年度に始動した第6次沖縄振興計画(新・沖縄21世紀ビジョン基本計画)の中間検証に着手する年であり、沖縄振興審議会において、近年の環境の急速な変化による影響が考えられる観光や北部・離島振興、子どもの貧困対策などの政策分野にテーマを絞った上で検証が進められている。これまでの5次にわたる振興計画により社会資本の整備が進み、観光産業や情報通信関連産業の振興など着実な成果が現れている一方で、一人当たり所得水準が全国平均の約7割で全国最下位、子供の相対的貧困率はやや改善傾向にあるものの、23%と依然として全国と比較して深刻な状況が続いており、現状を再認識した上で、未解決の課題解決に取り組んでいく必要がある。
Ⅱ 活動基本方針
2024年度は例会を計画通り開催するとともに、各委員会では活動方針に則り、専門家や有識者による講演や意見交換、視察等を通じて、県経済を取り巻く諸課題について考察を深めた。また、重点施策に掲げた、沖縄独自の高度な技術や沖縄発のスタートアップならびに知的財産等を活用した稼ぐ力の強化の一環として、OISTの認知度向上や高度な研究成果や知的財産等を産業界の事業化・スタートアップに繋げる仕組みを考察する調査研究に取り組んだ。さらに、2023年度に県と内閣府に手交した「有事の際の『事業継続』と『従業員避難』に関する提言」において、その重要性を指摘した、事業者用の有事対応要領のひな形作成・公表にも取り組んだ。加えて、新沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の実現に向けて、県と協力した取り組みを進めた。
2025年度は、沖縄振興特別措置法の見直し規定による「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の検証作業を行い、計画の実現に向けて着実に取り組むべき年度である。県経済発展に向けた極めて重要な1年であり、改めて当会の存在意義を発揮しつつ、国・県と連携し、県経済の発展と持続可能な社会の実現に向けて取り組む。具体的には、基幹産業である観光業の高付加価値化、DX推進やリスキリング等の人材育成による生産性向上、イノベーション・エコシステム構築への取り組みをより積極的に行う。また、沖縄独自のノウハウや沖縄発のスタートアップならびに知的財産等を活用した稼ぐ力の強化に向けた調査研究に取り組むとともに、内閣府と県に手交した「OIST発展に向けた提言書」の内容である、OISTを支援するための取り組み、具体的にはOIST発展特別委員会を設置し、経済界とOISTの連携においてリーダーシップを発揮するとともに、OISTの全国的な周知活動の強化に取り組む。
その他、労務・育児・介護関係をはじめとした各種法改正への対応に向けた啓発・研究活動にも取り組む。
1.スローガン
「沖縄の力強い未来に向けてハッシン(発進・発信)!」
2.取り組み事項(重点施策)
●内閣府と県に手交した「OIST発展に向けた提言」の内容の実現に取り組む。
●GW2050 PROJECTS 推進協議会と連携し、構想の実現に向け取り組む。
●第6次沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の内容を実現するための調査研究や産学官等の連携強化に向け行動する。
●前年度に引き続き、有事にかかる提言書のフォローアップに取り組む。
Ⅲ 活動方針
1.活動計画
(1)例会活動
原則として、毎月第2月曜日(1・4・8月を除く)に例会を開催する。
例会は政治・経済や経営・ビジネス分野を中心に、その時々の時代を見据えた沖縄の経済振興のあり方や企業経営の指針となるようなテーマで講演を企画する。
(2)研究委員会活動
以下の9つの委員会を設置する。
各委員会は、原則として副代表幹事を責任者とし、その下に委員長を置き、年度計画で定めた活動方針・テーマに基づき研究活動を行い、積極的に提言していく。
➀ 国際委員会
めまぐるしく変化する世界情勢を踏まえつつ、沖縄が日本とアジアを繋ぐ国際ハブとしての役割を担うべく、近隣諸国との経済交流促進や国際競争力強化に向けた調査研究を行うとともに、国際物流拠点のさらなる強化と臨空・臨港型産業の集積促進ならびに世界最高水準の空港を目指した調査研究を行う。また、海外視察を通じて、海外ビジネスの可能性や世界的な先進事例、グローバル人材の育成・活用、国際ビジネス環境の整備等について調査研究を行う。
② 地域・経済活性化委員会
沖縄経済の更なる成長に向けて、GW2050 PROJECTS 推進協議会と連携した基地返還跡地の経済的戦略や、OISTの基礎研究力を活かした産学連携について調査研究を行う。さらに人手不足対策としてDXの活用や若年、女性、高齢者、外国人労働者の雇用などの経済対策について調査研究を行う。また、地域資源(農業・漁業・伝統工芸など)を活かした観光の高付加価値化やオープンデータを活用した未来型都市モデルの構築について調査研究を行う。
③ 観光委員会
沖縄観光の持続可能な発展と収益力強化を目指し、地域資源を活かした高付加価値観光の推進、観光地の分散化や環境負荷軽減、デジタル技術を活用した観光DX推進等について調査研究を行う。さらに、エコツーリズムの促進、地域産業の連携による観光の多様化等、SDGsに適応した観光地マネジメントについても引き続き調査研究を行う。また、今夏本島北部に開業予定の大型テーマパー「ジャングリア沖縄」については、沖縄観光の競争力向上と地域経済の活性化が期待される一方、交通渋滞、環境への影響、オーバーツーリズム等も懸念される。これらの動向についても注視していく。
④ DX推進委員会
沖縄の稼ぐ力の強化を目指し、県内企業のDX推進に貢献することで、生産性向上および業務効率化を後押ししていく。具体的な活動として、地方自治体をはじめIT先端企業やスタートアップ企業等の知見を活用し、島嶼県ならではのドローン技術、AIの導入、サイバー対策、オープンデータの観光利用等について、産官学の連携を重視した調査研究を進めていく。
さらにGW2050 PROJECTSのDX人材の育成・輩出に向けた取り組みや沖縄県DX推進計画を踏まえた沖縄のデジタライゼーション推進を通じ、地域の豊かさやレジリエンス向上を目指す調査研究を実施していく。
⑤ 環境・エネルギー委員会
近年の燃料価格の高騰や円安、さらにはAI技術の急速な進展に伴うエネルギー需要の高まりを踏まえ、エネルギーセキュリティーの重要性への理解を深め、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの主力化や水素・アンモニアなどの次世代エネルギー等に関する調査研究を行う。また、島嶼地域ならではの脱炭素社会に向けた取り組みや新たな産業シーズの可能性を探るとともに、沖縄が持つ豊かな自然環境や生物資源の存在価値に対する考察を深め、その保全と管理、さらには有効かつ持続的な利活用についての調査研究を行う。
⑥ 基地・安全保障委員会
年々厳しさを増す安全保障環境に注視し、日米の安全保障政策の動向と沖縄の役割について、県内外有識者、自衛隊関係者、米軍関係者等による講演・意見交換・視察等を行う。さらに、日米地位協定や在沖米軍基地の負担軽減等に係る諸問題について冷静に考慮しつつ、アジア・太平洋地域における我が国の安全保態勢、及びその中での沖縄県の位置づけに関する調査研究を行う。
⑦ 未来創造委員会
持続可能で多様な人財が活躍できる社会の実現を目指し、新しい産業創出に向けた教育・イノベーション環境整備や産学連携による未来のリーダー育成、リスキリング・教育施策等について調査研究を行う。さらに、社内外の垣根を越えて技術・アイデア・ノウハウ等を活用し、新しい価値を創造するオープンイノベーションの取り組みやスタートアップエコシステムに関する調査研究も行う。
⑧ SDGs推進委員会
今や、SDGsは“世界が共有する普遍的価値”として定着し、企業は社会の公器たらんことを求められるようになった。各研究委員会においても、調査研究はSDGsの考えを反映するようになっている。そこで当委員会は、調査研究にとどまらず、県政と連動し、SDGsの根幹である“人権の追求”に関する具体的アクションに踏み込みたい。具体的なテーマとして、こどもの貧困や社会格差等が想定されるが、沖縄の抱える課題について新委員会の中で改めて議論した上で、テーマを絞り取り組んでいく。
⑨ OIST発展特別委員会
2025年3月に県や国に手交した「OIST発展に向けた提言」を踏まえ、特別委員会を設置して、各提言事項の実現に向けて取り組む。具体的には、提言内容の継続的な周知活動を行い、また、GW2050 PROJECTS 推進協議会と連携してOISTと経済界の定期的な意見交換を行い、産官学連携の実現を進める。
(3)会員親睦活動
会員の親睦・交流を図るため、親睦会、ゴルフ大会、新春懇談会等を開催する。
(4)交流活動
九州経済同友会および他地域経済同友会との交流を図る。
(5)入会促進活動
会の活性化を図り活動をさらに発展させるため、なお一層会員の増強に努める。
(6)その他活動
①当会の活動に沿った県内の経済団体や行政機関等との連携・協力に努める。
②当会の諸活動や会員異動等の報告と例会における講演要旨の情報提供のため、季刊誌を発行する(年4回)。
③会員に対するサービスの一環として、当会以外の団体が開催する講演、シンポジウム等の会員への情報提供を行う。
④当会ホームページへの視察報告書等掲載を通して、会員への委員会活動内容・新着情報提供に努める。
2.会務執行組織
(1)代表幹事会
必要に応じ随時開催し、当会運営に関する重要事項について審議する。
(2)常任幹事会
例会開催に併せ、原則として毎月第2月曜日(1・4・8月を除く)に開催し、当会運営に関する事項について審議・報告を行う。
(3)幹事会
幹事会の申し合わせ、又は代表幹事の必要に応じ随時開催し、当会運営に関する重要事項について審議する。
(4)総務企画委員会
各委員会の委員長で構成し、当会運営に関する重要事項について協議し、必要に応じ代表幹事会、常任幹事会に意見具申する。
(5)組織拡大・交流委員会
会員拡大と組織の活動強化、さらには会員間・他経済同友会等との親睦交流を図る。